今年度は以下の4種のアクセント調査を行った。(1)新しいタイプの中央式の代表としての京都方言の記述調査の続行、(2)古いタイプの中央式アクセントの代表としての高知市方言の記述調査、(3)古いタイプの中央式アクセント(高知県・和歌山県・兵庫)の分布調査、(4)体系として中央式に類似している讃岐式アクセント(2式と下げ核が弁別的)の記述調査研究。 当初の計画では、最初に(1)の調査を完成させ、1-3モ-ラ体言の資料集を刊行するはずであったが、話者の一部が入院するという予想外の事態があり、(2)(3)(4)を先に進めた。そして、(3)(4)については、各々『アクセント小辞典』という形の本科研報告書を作成することができた。これによって、従来断片的にしかわからなかった、高知・香川諸アクセントの全貌がはじめて明らかになった。とりわけ、(4)の小辞典は、東京・京阪方言対象のものをのぞくと、これまで刊行されたアクセント辞典の中で、もっとも詳しいものである。 また、その成果を踏まえて、従来は類別語彙しかわかっていなかった、讃岐式と中央式の対応の詳細を明らかにした。そして、漢語の類別語彙の類の認定の問題点なども指摘した。 今年度の調査研究によって、中央式諸アクセントの実態・史的変遷の解明に、かなりの貢献を行うことができたと信じる。
|