昨年度までの、高知市・徳島市・香川県方言の各アクセント小辞典に引き続き、今年度は、(1)『京都市方言アクセント小辞典(付.京都府中川・滋賀県野洲方言)』、(2)『兵庫県南部方言アクセント小辞典(付.和歌山県江住方言)』を刊行した。以上の5冊の小辞典によって、中央式アクセントの変種のかなりの部分を網羅し、その史的変遷の解明を格段に進めることができた。南北朝以降のアクセント文献資料が乏しいため、現代方言アクセントの比較研究によってのみ明らかになる点が多いのである(例:3・4拍漢語のアクセント、複合語のアクセントなど)。また、京都市アクセントについては、上記(1)において、外来語の共時的記述研究を行い、3拍L2型・4拍H0型の出現条件を明らかにし、共通語の3拍2型、4拍0型の出現条件と対照した。 兵庫県南部については、地元の方言研究者である冨田大同氏・井上守氏・橘幸男氏にご協力を頂いた。 上のアクセント小辞典は、いずれも項目数が2万前後と、やや少なめであるが、基本的な部分はほぼもれなく記述ができたと考えられる。刊行には至らなかったが、10万以上の項目からなる京都アクセントの資料もほぼ出来上がっており、これらを併せれば中央式アクセントの資料集としてほぼ十分な量が完成したことになる。 また、自然談話の文字化によるアクセント記述も続行し、『方言会話資料(2)京都(2)』を刊行した。昨年の『方言会話資料(1)京都(1)』などと併せて、合計15時間前後の会話の文字化資料が出来上がったことになる。これは、アクセントのみならず、文法・語彙・談話研究のための基礎資料となる。
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