研究概要 |
本研究は、平成9年と平成10年の2年間において、『元朝秘史』のモンゴル語の文法形態素の意味と機能を計算機を利用した手法によって分析し、文法体系を記述しようとしたものである。研究期間中に『元朝秘史』全12巻のモンゴル語をローマ字転写の形で計算機に入力するとともに、本文中に現れるすべての単語について語幹と語尾の境界にタグを付する作業を行い、計算機処理に最適化した電子化テキストを作成した。 電子化テキストの作成に当たっては、Louis Ligeti "Histoire secrete de Mongols"(Budapest,1971)のローマ字転写に基づきつつも、これを原本である四部叢刊本『元朝秘史』の巻、丁、行をタグとして付し、各行を原本に対応させたほか、本文中の名詞類には語幹と曲用語尾の境界タグを付し、動詞類には語幹と活用語尾の境界タグを付した。また、電子化テキストを入力する過程で、上記Ligetiのローマ字転写を四部叢刊本『元朝秘史』の本文と照合した結果、Ligetiの転写中には500箇所以上の誤記・脱字・脱落があることが判明した。電子化テキストではこれらを校訂し、原文に一層忠実なローマ字転写を行った。 このように入力・整理を行った『元朝秘史』モンゴル語の電子化テキストを計算機によって統計分析を行い、全12巻に現れるすべての単語の出現頻度と出現位置を示した索引を作成したほか、文法的接尾辞〈名詞類の曲用語尾と動詞類の活用語尾〉についても同様の検索を作成し、さらにそれらの文脈付き索引(KWIC)を作成して、用例を一覧の形で参照できるようにした。
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