高齢者や在日外国人など「カタカナ語弱者」を配慮した日本語はどうあるべきかという問題は、21世紀の日本語環境を考える上で重要な課題の一つである。そこで、公共レベルでのカタカナ語(外来語)の使用実態を探るため、全国47都道府県および12政令指定都市を対象に、「役所言葉」に関するアンケートを行い、その中での「役所カタカナ言葉」の扱われ方を調査した。その結果、「役所言葉」全般の見直しマニュアルを作成した自治体は8割強と多く、カタカナ言葉も見直しの一項目として触れられてはいるが、個々の語に訳語や注釈例を備えたカタカナ語リストを作ったりその使用目安を与えたりして、カタカナ語に本格的に取り組んでいるところは2割弱と少ないことがわかった。 なお、収集したカタカナ語リストは、「そのまま使用して差し支えない」「注釈が必要」「訳語に言い換える必要がある」など、その使用目安を与えた5県1市の分についてデータベース化した(約1000語)。そして、このデータベースとともに、関西3府県(兵庫・大阪・京都)広報誌に使われているカタカナ語のリスト、役所言葉作成一覧などを収録した研究成果報告書『行政とカタカナ語-全国役所言葉調査-』を刊行した。この報告書は、次年度に予定されている、高齢者や在日外国人、あるいは一般市民を対象とした「カタカナ語環境調査」のための基礎資料としての意味を持つ。
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