変容著しい日本語社会の中でも、国際化と高齢化にどのように対処していくかは緊急の課題である。そのひとつのケーススタディとして、急増するカタカナ語を対象に、これからのカタカナ語環境、ひいては日本語環境のあるべき姿を探った。特に「カタカナ語弱者」と目される高齢者や在日外国人の視点から、彼らにとって最も身近で公共性の高い媒体、例えば自治体の発行する広報誌などを対象とした、1)カタカナ語使用実態調査と、その結果をもとにした、2)カタカナ語意識調査とによって、その問題点と解決策を考察した。 1. カタカナ語使用実態については、本科研「平成9年度研究実績報告書」の「研究実績の概要」を参照。 2. カタカナ語意識調査については、「役所カタカナ語」の発信→受信という情報の伝達過程に注目し、その発信者たる「役所」、その媒介者であるマスメディアのひとつとしての「新聞社」、受信者としての「高齢者」、そしてその高齢者とかかわりの深い「老人福祉関係者」、さらには在日外国人に日本語を教える立場にある「日本語教育関係者」へのアンケート調査を行なった。その結果、以下のことがわかった。 1) 高齢者を中心に、カタカナ語使用上の「統一規準」を望む声が高かった。 2) 表記方法の面では、「カタカナ語に説明を添える」型がどの回答属性でも最も支持されていた。 3) ただし、認知度の低いと思われるカタカナ語については、「言い換え」型が3割を超えた。(ライフライン、テレトピア、アメニティ、ノーマライゼーション、インフォームド・コンセントなど) なお、このアンケート調査の詳細については、研究成果報告書『役所カタカナ語意識調査一役所・新聞社・高齢者・老人福祉・日本語教育関係者-』を参照されたい。
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