当該研究は、平成八年度科学研究費補助金[奨励研究A]を得て行った研究「一九三〇年代パリと外国人芸術家」を受け、それをさらに発展、完成する目的をもって平成九-十一年度に行われたものである。 当初の予定通り、平成九年度に三本の論文をまとめた時点で、平成八年度までの十本の論文と共に集大成し、平成十年度に単著として公刊した(その際さらに二本の論文を書き下ろした。詳細は本報告書に転載した同書巻末の「初出一覧」参照) 『パリ・貧困と街路の詩学--一九三〇年代外国人芸術家たち』(都市出版、平成十年五月、総計五〇〇ページ)と題したこの著者は、「ナチズムと不況の時代」下、芸術的には不毛とされてきたこの時代に、パリに亡命した多くの外国人芸術家たちによって、驚くほど豊で、また共通する都市表象が生み出されていたことを、文学、絵画、写真のジャンルを越境して解明したものである。 以上のような(平成九、十年度)研究を通して、次第に明らかになったことは、十九-二〇世紀の「パリ神話」の変容を考えるにあたって、〈写真〉というメディアについての研究が不可欠であるという事実である。十九世紀後半に、パリという都市自体に生まれた〈写真〉メディアは、都市表象そのものの形成に深く関与している。また十九-二〇世紀パリでは文学者と写真家のコラボレーションによる作品が数多く成功したという興味深い事例が散見されるのである。そこで最終年度(平成十一年)は、「パリ表象をめぐる文学と写真」というさらに発展的テーマに取り組んで別記のような論文にまとめ、本研究の総括にすると同時に、さらに次の著書を公刊する準備段階へと進んでいる。
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