本年度は二年間プロジェクトの初年度に当たるが、まずは資料収集と各関係分野の研究者との情報・意見交換から作業に取り組んだ。 (1)資料収集 イギリス側は主にフレンズ・ハウス図書館、アメリカ側は主にハバフォード大学付属図書館の協力を得て多くの入手困難な資料を提供して貰っているが、前者には17世紀までさかのぼるクエーカー歴代運営委員会の議事録の検索・抜粋して貰ったことと、後者からは「クエーカー・ヒストリー」という学術雑誌の全巻の総索引を大阪大学付属図書館に寄贈して貰ったことが特記に値する。アメリカの「クエーカー芸術関係者の会」と「クエウーカー・ユニヴァサリスト・フェロ-シップ」、イギリスの「クエウーカー・ユニヴァサリスト・グループ」という団体とも活発的な情報・意見交換を行い始めて、その発行物を提供して貰っている。 日本関係の資料については国立国会図書館、国立能楽堂の図書閲覧室および調査養成部、そして法政大学の能楽研究所で資料収集を行った。特に何世紀前から上演されなくなった能の「番外曲」の発掘作業は時間がかかりそうだが、有意義な成果が期待される。 (2)学会活動 海外の国際学会では口頭研究発表を3回行った。昨年8月には国際比較文学会(オランダ・ライデン大学開催)で能における女性の表象、特に神と人間の差異について発表した。10月には能「女郎花」(おみなめし)についての円卓式シンポジウム(ピッツバーグ大学開催)に参加した。12月には17世紀〜19世紀の東アジアにおける儒教をテーマとした学会(シンガポール国立大学開催)で世阿弥の伝書に現れる儒教思想について発表した。(その際、ハーバード大学の世界比較宗教研究所の共同研究員と話し合えて特に貴重な意見交換が出来た。) 日本国内では、今年の3月に国際日本文化研究センターの共同研究会で新作能と復曲能の宗教性について口頭発表を行った。 それぞれの機会を得て多くの知的な刺激を受けた。来年度も継続してこの研究活動に更に励んで成果を出したく思う。
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