平成11年度は、本研究の最終年度として、資料の再検討と論文の執筆に重点を置いた。 この成果は、科学研究費補助金研究成果報告書『中国煙粉小説の受容に見る情愛観の比較研究』として出版した。 その内容は、研究代表者が、「煙粉とは何か」というジャンル定義を行い、ついで東アジアに広く受容された『金雲翹伝』を手がかりに、「金雲翹伝考」と題し多角的な検討を加えたものである。「金雲翹伝考」は次の五章より成る。「一、版本について」「二、金雲翹伝の形成」「三、金雲翹伝のアジア文学への影響…ベトナム…」「四、金雲翹伝のアジア文学への影響…日本…」「五、金雲翹伝のアジア文学への影響…朝鮮半島および満州語文化圏…」この研究によって、各文化圏の恋愛観の相違が文学の中で如何に展開したかを明らかにすることが出来た。 また、研究分担者は、同報告書にて、「江戸時代の諸藩及び個人文庫に見える煙粉小説の書名について」「ベトナム・満州などにおける中国煙粉小説の版本考」を記し、煙粉文学受容の実体を書誌学的視点から解明した。 一方、研究代表者は、煙粉小説における「嫉妬文学」の系譜について「酢葫蘆」小説を中心に、東アジアの嫉妬文学の受容を執筆中であり、継続して発表していく予定である。
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