イギリスに誕生したブレア政権は、この研究にとっても非常に研究に値する対象であったので現地での研究交流の成果を活かすよう努力した。すなわち、現在進行中の日本とイギリスの司法改革に共通項を見い出しながら、そこに表面的には共通して現れている司法への市場原理の浸透から帰結する、競争原理を根拠とする司法の「私化」が、現実にはどのような法の変容過程を導いているかについての研究である。例えば公的訴訟システムに付加される非公的な紛争解決メカニズムによる「代替」にひとつをとってみても、そこには法の独立に由来する大きな相違が現れているという事実がある。この違いは、法律扶助における彼此の圧倒的相違を前提にしても説明が難しい。これは、ブレア政権の社会的基盤を支えるコミュニティ、および総じて社会のなかに存する人々の「共同性」の差異とそれを規定する何らかの歴史的要因に起因するとみるべきである。他にコミュニティ再生計画の調査の過程で同じ問題を意識した。近くそれを含めた分析を行うが、とりまとめの方向としては、従来の都市における市民的公共性の形成の問題に関連した法的な規制の変化を扱うこととし、そこに本年度の研究実績もまた投影させる方向を検討した。もとより司法の問題に関連してもこの研究の成果を活かすよう試み若干の成果を公表することができた。
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