研究概要 |
平成九年度は、まずこれまで収集した多様な業界の契約慣行と企業内秩序に関する資料を整理し、また、電子データ処理に関する諸問題について基本資料を収集した。次に、経済学、経営学の専門家から専門的知識の提供を受け、分業制度が現実には必ずしも効率化をもたらさないこと、日本企業の経営実態に関する効率性論的説明の循環的性格など、分業秩序の基本問題について知見を得た。しかし、不完備契約を補う組織編成として企業という組織を捉える視点は揺るがなかったので、市場における契約を用いた交換よりも効率的な流通方式として企業における組織的流通を捉え、その観点から継続的取引における契約の機能を考察するアプローチを堅持した。その上で基本文献のサーベイを行ったが、<分業の法学>という新たな分野の発見によって必然化した本研究の場合、対象の絞り込みと研究手法の開発など、研究計画を具体化する作業がサーベイに並行した。すなわち、 1) Baker, G., R.Gibbons, and K.J.Murphy, ゙Implict Contracts and the Theory of the Firm"1997 2) Katz, A.W., ゙Contract Formation and Interpretation"1997 山本敬三「現代社会におけるリベラリズムと私的自治-私法関係における憲法原理の衝突」1993年 などを利用しつつ、経済学、経営学、法学の成果を契約と企業の分析に用いる手法の開発に努めた。中間的な成果として、「憲法と民法」の分野がこの観点から考察されねば一面的となることなどが明らかになった。研究環境の整備の点では、サーバーを立ち上げ、情報の一元管理とそのインターネット公開の準備が整った。さらに、新たな機器導入によりデータの収集が容易になっただけでなく、その入力も飛躍的に簡便化した。
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