今年度は初年度として、法文化の概念の明確化に努めるとともに、東南アジア地域を中心とする法制度の現状と歴史について検討を行った。方法としては法に関する出版物や雑誌等の検討を中心とるすものであったが、ベトナム、ラオス、カンボジア等の移行経済諸国の法制については、公正取引委員会や法務省の行う研修に参加し、ヒアリングも行っている。法文化やそのキイ概念であると考える「共同性」の問題については比較法学会や法社会学会の企画に参加し、その中で多くの知見を得ることができた。 地域統合と密接に関係する多文化社会概念については、そのモデルとしてオーストラリアの問題を、また日本の問題についてそれぞれ論文を公表し、人権の法文化的アプローチという視点から比較法学会で発表したフィリピンの例を公表する予定である。また、1998年1月29〜30日にオランダのライデンでアジア国際研究所(IIAS)が主催した「東・東南アジアにおける法と開発」のワークショップに参加し、東南アジアの法と発展の研究視角についての報告を行った。 次年度以降については、計画通り南アジアおよび東アジアにも広げる予定であるが、APECの動きにみられるように、21世紀には欧米ないしアングロ・サクソン型法文化とアジア型法文化の対立・相克と融合という状況も確実に問題になると考える。 そこでアジアに近く、アジア移民が増え続けているオーストラリアについてメルボルン大学アジア法センターやシドニー大学アジア・太平洋センター等の大学研究機関を訪問し、次年度以降の計画についてレビューを受けるとともに、将来の共同研究の可能性についての討議を行った。
|