欧米諸国の環境アセスメントにおける住民参画制度とその実際の運用、そしてその社会的背景を比較的に検討することを目的とした本課題について、まずイギリスとニュージーランドについて著書を含む成果を発表した。それらでは、それぞれのバックグランドを再検討しながら、英米型環境保全に向けたアセス過程における事前協議と合意形成が、旧来の単なる住民参加でなく、ロビー活動を含む各層からなる技術的政策過程としての「公衆」参画として展開していることを明らかにした。加えてニュージーランドでは先住民の参画がアセスにおける合意形成においても重要な要素であり、環境アセスは単に手続きの問題でなく当該計画・事業がもたらす社会形成への「効果」という視野を含んでいることをみた。また、イギリス、ノルウエー、オランダにおける住民参画制度は、計画・事業の「景観」にもたらす影響アセスに及び、技術的な専門性を生かしたパートナーシップ制として展開している。このことは、北欧の環境政策決定における複合的な公衆の位置づけをめぐる議論(とくにスウエーデン、デンマーク)、元来技術的な専門性が高いオランダのアセスにおける地方自治体と市民の共同合意形成というかたちでの参画制度、そして行政行為の中立性をはかるドイツの行政手続きの方向にもあらわれており公衆参画の専門性への展開でもある。北欧、ドイツなどについては、口頭発表(1999年度-共に1999年6月の国際アセスメント学会日本支部研究大会、環境法政策学会ほか)で触れたが、それらをアメリカとの比較を視野にまとめに入っているが、さらに、環境アセスメントとくに戦略的アセスメントへの展望が可能な社会的背景について整理してみたい。
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