1. 環境影響評価法(以下、法と呼ぶ)には、特に、評価対象につき以下の問題点のあることが判明した。第一に、従来の閣議アセスに比し発電所、普通鉄道及び大規模林道が新たに対象事業に加わり、またダムについては、二級河川にかかるダムや建設省所管外の堰が加わるとともに、規模要件も引き下げられた。これにより、対象事業の範囲は拡大したが、第一種・第二種の両事業とも規模要件が依然として高く設定されているため、対象からはずれる事業も多い。池方、この間に地方公共団体が制定・改正した条例の中には、面的開発事業について国より小規模の事業にまで対象事業を拡げるとともに、第二種事業についてもスクリーニングを設けず直ちに評価対象とする例も現われていることが判明した。この場合、第二種事業に関しては、公告・縦覧並びに公聴会等の住民参加手続を簡略化した手続で済まされる点が特徴的である. 第二に、法は、専ら事業の実施計画段階での環境影響評価のみを想定した法律であり、基本計画段階での評価制度を想定していない。今後は、基本計画段階で住民意見の反映を盛り込んだ戦略的・政策的アセスメントと呼ばれるタイプの制度創設に向けた研究が必要であることが判明した。 2. フランスの環境法・都市計画法の専門家から受けたレビューにより、フランスでは、環境影響評価と公開意見調査手続の運用実態に様々の問題のあることが判明した。ことに、公開意見調査については、制度創設から10年以上の経験を踏まえ、計画策定初期段階で公開・公衆参加・討論を可能とする方向での制度再編の必要性が、論議の的となっていることが判明した。科学的評価と合意形成との関連づけに立脚した総合的公益評価システムの構築という課題にとって示唆的な論議として、一層の研究を要する。
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