1.環境影響評価法に基づく評価手続きは、事業者と所管官庁との許認可関係を基軸として、環境情報の提供・集約と評価・意見の交換のための制度という位置づけの下に、個々の具体的事業計画の段階で、専ら自然的環境要素のみを評価対象として実施されるものである。もっとも、市民・地方公共団体・環境庁長官に「環境の保全の見地から」意見書を提出する機会を保障したこと、スコーピング手続導入により情報提供と意見交換を内容とする手続開始の可及的早期化を図ったこと、自然的環境要素を広く評価項目に組み入れたこと等により、評価手続きの民主性・合理性の向上と実効性の確保を可及的に図ろうとした制度であることも判明した。 2.開発事業の評価手続きに関するフランスの法制度では、科学的な環境影響評価と市民参加並びに省庁間調整とが制度的に切り離され、環境情報への市民のアクセス保障並びに市民の評価・意見・対案提起による公共的合意形成は、公開意見聴取手続という別立ての制度を通して行われる。事業者による環境影響評価と市民参加による公共的合意形成とを有機的に結びつけることにより、自然的環境構成要素の調査・予測・評価に限定されない事業計画総体の公益評価を可能とする仕組みとなっていることが、判明した。 3.フランスでは、国や地方公共団体にとって特に重大な環境影響の恐れある施策(事業計画や政策)については、施策の構想初期の時点から当該施策の社会経済的な効果や費用等を広く論議するための手続が、上記の諸手続とは別立てで制度化されている。これに対し、わが国の場合、国レベルではかかる政策アセスメント的制度は未整備であるのに対し、地方公共団体の中には、要綱等によりこの種の政策アセスメント的制度の導入を模索している例のあることが判明した。
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