研究概要 |
フランスの最も基本的な都市計画である土地占用計画(POS)について,日本の都市計画との対比という視点から,以下のようなことが指摘できる。 1. フランスにおける都市計画規制の考え方は,都市形成の歴史的なありようを反映して,市町村レベルでの公序の一環(警察)という面から捉えられてきた。 2. 都市計画は日本のように都市圏という単位で構成されるのではなく,あくまで市町村単位で構成されるのが基本となる。市町村当局による域内諸地域の把握の程度は,市町村規模の狭小性も与って極めて高いものとなっている。 3. 市町村による都市計画規制の歴史は,都市計画事務の中央集権化を経験したにもかかわらず(1943〜1982),地域配慮に適合的な規範構造を現出せしめた。この点,わが国では,権限委譲が計られただけで,規範構造の分権化にはまだ手が着けられていない。 4. 都市計画法典に収められた国法体系はきわめてシステマティックなものだが,その一方で,市町村の裁量を広く認める柔軟な規範構造が認められる。 5. 都市計画図書のレベルでは,自然・文化の両面から詳細な現状分析を行い(簡易な環境アセスともいえる),それをふまえて課題(都市政策)を提示する「冒頭報告(rapport de presentation)」の存在が注目される。つまり,単なる技術的文書にとどまらず,自己完結的な戦略的文書の性格を持つ。 6. また,単なるハード面での都市計画にとどまらず,文化財保護や社会住宅の受入等を含んだ土地利用に関する総合的文書の性格を持つことも指摘できよう。
|