昨年の分権改革は、都市計画を自治事務としたにもかかわらず、都市計画に対する国法の厳格な枠付けを維持した点で不十分なものだった。本研究は、わが国における都市計画の地方分権をさらに進める手がかりを得るため、フランス都市計画法の規範構造を考察するものである。この研究によって得られた知見は以下の通りである。 1.フランスの土地利用規制は、市町村が策定する土地占用(POS)により行うのが基本であるが、POSの未策定地域には国の都市計画全国規則(RNU)が適用され、規制の空白が生じないよう配慮されている。 2.POSによる規制は、敷地・建築物のさまざまな側面に及んでおり、かなり強度の規制も許容されうるものとなっている(美観規則さえ広く許容されている)。 3.国法(都市計画法典)によるPOSの枠付けは極めて穏やかなものであるため、市町村当局は、ゾーニングや個々の規制について、かなり自由にその内容を決定することができる。このことは、都市政策の遂行を容易にするであろうし、地域特性に適切に対応する途を開くものであろう。 4.フランスの分権改革(1982年)は、国法のかような暖い枠付け構造を前提にしたうえで、POSの策定権を他の土地利用規制権とともに市町村(当局)の手に委ねるものであった。ここで、市町村当局の広い裁量権をどうコントロールするかが課題となるが(開発抑制と建築自由の両方向からのコントロールがありうる)、フランスでは、住民に、事前手続きで意見を述べさらに行政訴訟で争う途が開かれていることが注目される。 5.POSの策定理由を述べる趣旨報告は環境分析を含む重要な文書であって、都市計画に対する住民の理解と関心を高めるのに役立つだけでなく、行政裁判所での審査を容易にする点でも大きな役割を果たしている。
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