平成9年度の研究は、通常兵器の中でも特に地雷(対人地雷)の法規制の動向を分析することであった。当初の計画では、1980年の特定通常兵器禁止制限条約の地雷議定書及びその1996年の改正地雷議定書を研究対象としていた。しかし、1997年12月の対人地雷禁止条約が成立したことにより、それも加えて3つの時期区分に基づき、それぞれの議定書や条約の作成過程の資料を収集するとともにそれぞれの特徴及び相互関係を分析した。 1980年の地雷議定書は一般的な法規制しか規定しておらず、また国内紛争には適用されなかったので、それらの点を改善するために1995年から1996年にかけて再検討会議が開かれた。その結果作成された改正地雷議定書では、国内紛争への適用拡大や部分的な地雷の使用禁止(探知不可能な対人地雷)及び使用制限(自己破壊装置又は自己不活性化装置の装着)がコンセンサス方式により規定された。 対人地雷の法規制が部分的に改善・強化されたとはいえ、改正地雷議定書によって現在の「地雷危機」を解決することが困難と判断したグループが、コンセンサス方式を放棄して1996年10月以降対人地雷の全面禁止を条約化することを企画し運動していった(オタワプロセス)。NGOによる対人地雷全面禁止運動の支援も受けて1997年12月には、対人地雷禁止条約が成立した。そこでは、対人地雷の使用、貯蔵、生産、移譲の禁止並びに貯蔵分及び埋設分の破棄を義務付けている。ただし、当該条約はコンセンサス方式で作成されなかったので、普遍性の確保が困難と予想される。現在では、地雷議定書、改正地雷議定書(未発効)、対人地雷禁止条約(未発効)が併存する状況であるが、それぞれが対立するものではなく、補完する関係にあるといえる。 これらの分析を研究論文として発表するためにまとめている最中である。
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