「平成9年度」 (1)まずは、1995年に、その前身のガットを引き継いで正式に国際機構となった世界貿易機関(WTO)を中心に研究し、その成果を発表した。WTOは国連専門機関とはならなかったが、貿易に関する普遍的な専門機関として、国連と緊密な関係を保っている。国連システムの枠外にとどまりつつ、WTOが目指している国連との連携関係を具体的に分析した。その際、まずは国連本体とWTOの関係に関する国連文書を、ガット時代との比較、マラケシュ協定第5条1項に基づく書簡、国際貿易センター(ITC)の役割などを中心に分析した。次に、国連システムとの関係について、国連行政調整委員会(ACC)および国際人事委員会(ICSC)とWTOの関係を中心に考察した。さらに国連専門機関の中でも、国際通貨基金(IMF)および国際復興開発銀行(世銀)などのブレトンウッズ機構とWTOとの特別協定を中心に、世界経済を司る機構としてのWTOの役割を検討した。最後に国連による経済制裁が、自由貿易を基本理念とするWTOにいかなる影響を与えるかを検討した。この際、WTOの対抗措置と国連による経済制裁措置との関係についても検討を加えた。 (2)国連と専門機関との関係について、特に国連事務局に設置されている国連行政調整委員会(ACC)の活動を中心に調査した。ACCとコフィ・アナン国連事務総長による国連改革との関係について、来年度も引き続き研究し、その研究成果を発表する予定である。
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