本年度は、当初の実験計画にもとづき、予定されていた最終実験を行い、加えて、テレビ会議システムの一般的研究状況と今後の展望を検討した。 最終実験においては、テレビ会議システムによる証人尋問が証人に及ぼす影響を検証するため模擬尋問実験を行った。実験は、模擬尋問を証人と尋問者が直接対面する「対面」条件と市販のテレビ会議システムであるNTTフェニックス・ミニを用いた「テレビ会議」条件とに分けて行い、それぞれの被験者(証人)の体験評価を聞くという形で行った。その結果、テレビ会議システムを用いた場合、対面条件に比ベ、証人は自己の性格や表情を伝達することに困難性を感じていること、また、相手方の評価でも正確性評価や優しさの評価が劣ることなどが見いだされた。しかし、反面、テレビ会議条件では相手からの敵意の知覚は下がり、尋問場面の攻撃性低減には一定の効果があることが見いだされた。一般にいわれている緊張度の低下などに関しては有意な差は見られなかったが、これは基本的に緊張度の高くない模擬尋問のためであることも考えられた。テレビ会議システムの一般的研究状況に関しては、関連文献の調査を通じて、1996年以降とくにテレビ会議システムの応用に関する研究が増加していることが明らかになった。とくにその発展はビジネス、教育、医療といったものが多いが、法律関係の領域においても徐々に研究が増えつつあることが解った。各種領域で開発されたノウハウが法律分野にも応用されるようになることが期待される。今後は、これらの成果の総合的とりまとめを行う予定である。
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