研究概要 |
1.日本における実務の検討 日本における家事紛争の処理は、従来、訴訟事項と審判事項とに分けられ、その両者で全く異なった取扱がなされてきた。すなわち、前者は地方裁判所の公開法廷における特別民事訴訟事件として、後者は家庭裁判所における非公開の非訟事件として処理される。 しかし、このような振分けに対しては、(1)訴訟事項と審判事項は、紛争の性質から一義的に峻別できるものではない(審判事項のなかにも、a裁判所が後見的立場から処理にあたるべきものと、b遺産分割など争訟性の強いものがある)(2)訴訟と非訟の審理の形式も、明確に区分すべきではなく、事件の性質に応じた審理が行われるべきであるし、また、実務上もそのように模索されている(一部の審判について、対席審理など訴訟的な運用が試みられている)との批判が出されている。 本年度は、そのような理論上・実務上の視点から日本法の問題点を整理することができた。 2.ドイツでの成果発表と意見交換 1997年7月にドイツ連邦共和国のハイデルベルク家庭裁判所(=FG,第一審を担当)とカ-ルスルーエ上級地方裁判所(=OLG,第二審を担当)を訪問し、家事紛争処理の実務を見学した後、シュミット・アスマン判事(FG判事)やボックス判事(OLG判事)らと意見を交換することができた。 そこでは、(1)家庭裁判所中で処理する事件であっても、事件の性質により、公開・非公開を決めるべきである(2)日本法のように離婚の審理を公開するのは、プライバシー保護の観点から問題がある(3)非訟とされるもののうち争訟性のあるものは、当事者を対席させ、議論を戦わせた方が効率的であり、望ましい等の意見が出された。 また、上記以外に、調査官活用の有用性や、扶養料支払の裁判の後の履行確保等の問題点が、明らかにされた。 3.成果の公表 本年度の研究成果は、大学の紀要に公表するため、現在執筆中である。
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