1. 日本の家庭裁判所制度の比較法的検討 日本の司法制度全体に関して改革の動きがみられ、かつ、家庭の重要性が近時見直されている。にも拘わらず、家庭内の紛争を扱う家庭裁判所制度に関する議論は最も遅れたものとなっている。こうした状況下において、報告者は、今日まで日本の家庭裁判所制度を比較法的な視点からも分析してきた。具体的に述べれば、ドイツで家庭裁判所が創設された形成過程に関する歴史的研究のほか、その制度的特色を権限・機能を中心に解明し、併せて具体的な判例を素材として同裁判所の審理手続の法的特色を明確化した(ドイツ家庭裁判所に関する制度研究)。 本研究では、上記の研究を受けて、ドイツの家庭裁判所でどのような運用がなされているのかという点を中心に、分析を進めてきた。換言すれば、統計資料、訪問研究、家庭裁判官へのヒアリング調査を素材とした「ドイツ家庭裁判所の運用実態研究」である。 2. ドイツでの意見交換及び調査のとりまとめ 昨年度には、ドイツ連邦共和国のハイデルベルク家庭裁判所とカールスルーエ上級地方裁判所を訪問し、家事紛争処理の実務を見学したのち、判事らと意見を交換することができた。 本年度は、そこで得られた成果に文献・統計的資料を加え、調査をとりまとめることができた。 3. 成果の公表 本年は、上記2で述べた研究成果を学内外の研究会で報告し、その結果を論文の形でまとめることに重点的に取り組んだ。具体的に言えば、熊本法学に「ドイツ家庭裁判所における審理の実体分析」という論文を投稿した。これは、ドイツの家庭裁判所の実態分析であり、これまで例を見ない独創的な研究内容になったと考えている。こうした運用研究を広く世に示すことを通じて、日本法を素材にした議論を一層進展させたいと考えている。
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