1.日本の家庭裁判所制度の検討 司法制度に関しては、見直しが急務である。家庭裁判所制度に関しても、改革の論議が始まったが、問題点の検討は不充分である。こうした中で報告者は、日本の家裁を二つの観点から分析してきた。 第一に、家事調停委員としての経験や、聞き取り調査を踏まえた実態分析である。日本の家事調停のなかでは、夫婦関係調整・離婚の割合が高く、重要性もある。しかし、問題も多い。例えば、扶養料給付の基準が実務上曖昧である点、非監護者の面接交渉の権利性がまだ明確になっていない点などである。また、家事審判においても、訴訟事項が未決着である場合に、審判の進行上問題が生ずる点が明らかとなった。 第二は比較法研究である。離婚調停は不調に終わると、訴訟へと移行することが多い。しかし、訴訟は地裁における公開審理であるため、従来の手続きが活かされず、プライバシィ上も問題が多い。ドイツの家裁は、離婚訴訟を非公開で行い、付随事件をも結合して審理を行っている。すなわち、ドイツの家裁は、公開・非公開、訴訟・非訟等、様々な事件を取り扱っており、各々に対応した審理が行われている。人事訴訟事件を家裁に移管する場合の手がかりを示すものである。 2.ドイツにおける制度研究-意見交換及び調査整理 大学・家裁を訪問し、家事紛争の処理を見学したうえ、意見交換を行った。ドイツの家裁の権限が拡大し、単なる「離婚裁判所」以上の機能を持った点が明らかとなった。また、行政職職員(青少年局職員・社会局職員)との連携が有用であり、子供に対する調査等は、日本法にとって示唆に富む。 3.成果の公表 本年度の研究成果は、2000年2月26日に熊本法律研究会で報告したが(タイトル「ドイツ家庭裁判所の現状と日本法への示唆」)、大学の紀要にも公表するため、執筆中である。
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