1論文「会社法におけるコーポレート・ガバナンスの基本構造-効率性と公正性の基本的枠組み-」では、コーボレート・ガバナンスの二本柱である効率性と公正性を会社法がどのように受け止めるべきかを分析した。 これまで株式会社の特性は、「所有と経営の分離」と「所有と責任の分離」にあるとされてきたが、それらはいわばハ一ドの特性にすぎないこと、ソフトの特性として、株式会社は「所有と管理の分離」という特性を有することを明らかにした。また、これらの株式会社の特性は、いずれも効率性を支える制度てあり、これらに対応して公正性の仕組みが存在することになる。ところが、「所有と管理の分離」の特性が認識されていないため、これに対応すべき公正性の仕組みが欠落しており、法の欠缺となっていることを解明した。 2 論文「会社法学の再構築に向けて」では、会社支配理論を再構成し、株式本質論中心の会社法理論から株式会社本質論中心の会社法理論へ転換することで、新たな会社法理論を構築できることを明らかにした。この中て、株式会社のモニタリング・システムは、その対象を経営から企業通営チームに拡大すべきこと、モニタリング・システムの担い手としては、これまでの取締役会と監査役だけでなく、新たに中立監査役を導入すべきこと、この中立監査役を受け皿として従業員救済システムを立ち上げうること、また、所有と経営の間の多様性のなかで、所有がモニタリング・システムを超える役割を果たしうる柔軟なインフラ整備をなすべきことを提言した。 3 論文「米国機関投資家と企業統治構造の分析視角」では、米国機関投資家の実態を分析し、所有と経営の多様性を容認しうる会社法理論の方が、機関投資家の全体像に迫ることができることを明らかにした。
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