1 本研究は、株式会社の資本多数決を利用した一種の財産管理の仕組みととらえることによって、所有と経営の関係を、「所有と経営の分離」という分離の側面からだけでなく、「所有(の一部)と経営の連携」という側面からも把握できることを明らかにした。その結果、株式会社のもっとも基本的な特性は、「所有と経営の分離」を前提にしつつ、「所有(の一部)と経営の連携」することにあり、この理論を基礎にするとき、株式会社のモニタリング・システムを抜本的に改革できることを明らかにした。 2 本研究のモニタリング・システムは、以下の三点で、抜本的な改革を含むことになる。 (1)第一に、モニタリングの対象を、質的に拡大しうることである。すなわち、「経営者に対するモニタリング」にとどまらず、「企業運営チームに対するモニタリング」が必要であることを提示した。ここに企業運営チームとは、経営者とその経営者を選任する資本多数決管理株主によって構成される。 (2)第二に、モニタリングの担い手としては、現行の監査役、取締役会以外に、従業員(中間管理職)が選任する中立監査役を導入すべきである。この中立監査役を基礎にして従業員救済制度を整備すれば、初期消火体制を確立でき企業の自浄能力を飛躍的に強化することができる。 (3)所有と経営の間の関係は、「経営とそのモニタリング」という役割分担のみではない。会社支配理論を再構成することで、所有と経営の関係性の多様性とダイナミズムを認識でき、会社法の柔構造化を実現することができる。この会社法の柔構造化によって、公正性のみならず、効率性の観点からも、実効性の高い仕組みが可能となることを明らかにした。
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