新民事訴訟法の立法過程で、これまで民事訴訟の基本原則と考えられていた。弁論主義を核とする当事者主義(当事者対立の訴訟構造)に修正を加える動きが認められた。特に、審理手続に裁判所が積極的に関与することが許される諸規定が設けられた。例えば、最初の口頭弁論の期日前の参考事項の聴取、進行協議期日、期日間釈明、争点および証拠の整理手続としての準備的口頭弁論と弁論準備手続、調書判決の制度など、裁判所がイニシャティブを取る場面が多くなった。ここに例示したもののいくつかは、旧民事訴訟法のもとでも行うことができるものであるが、運用面で十分に活用されていなかった。新民事訴訟法制定後、数ヵ月経過した時点ではこれらの新しい手続は積極的に利用されているように思われる。 審理手続への裁判所の積極的関与は、運用の仕方を誤ると職権主義的訴訟運営に進むおそれがある。今年度の研究では、特に、審理手続について若干の検討を試みた結果、裁判所(裁判官)が厳格な訴訟手続を回避する意図で、口頭弁論によらずに訴訟資料に接して最終的な判断を下すことのないように、裁判所書記官を通じて訴訟資料の収集・整理にあたらせていることが、かなり明確になった。これは、いわば、訴訟の非訟化にともなう裁判所書記官の権限の拡大と考えられる。この点については、中間報告を予定している。 他方、新民事訴訟法に対する弁護士の意議については、1998年3月、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会のそれぞれ民事訴訟法の改正に積極的にかかわった弁護士の方に直接面会し、詳細な意見を伺うことができた。その内容をそのまま公表することは各弁護士の承諾を得ていないので、実態調査の報告のなかでわたくしなりにとりまとめて公表したい。
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