研究概要 |
19世紀フランス法学と日本民法学の接点を求めて、科研費の援助も受けつつ研究を開始したが、今年度は、(1)「債務の分類」に着眼して、物権変動につき意志主義の法制(フランス民法典→19世紀学説→ボワソナード・梅・富井を通じでのわが国への伝播がある)の下で所有権移転義務(与える債務の一要素たりうる)の存在不可能性を論証し、(2)於保不二雄の提示した「担保する給付」概念の再評価を試みた。 (1)については、民法施行100周年記念シンポジウム「物件変動理論と公示制度の現実」(日本司法書士会連合会主催、1998年3月6日)にて、パネラ-として「契約と物件変動の結び付き」というタイトルで報告し、その記録が近々に公刊されることとなっている。 (2)については、仏文原稿として、Del'obligation de couverture a la prestation de garantir-donner,faire,nepas faire...et garantir?-のタイトルで昨秋に原稿を提出し、今春公刊予定の単行本Melanges Moulyの中に収録されることとなっている。日仏の両法制の下で通用するような議論を試みているが、その源には19世紀フランス法学による債務分類の変形という問題があることを示唆している。 そのほか、本学所蔵の梅文書の仏文ノートにつき、北大助手のロベール氏の協力を得て、調査を行った。これは、司法省法学校でのアペ-ルの講義の内容を知る上で、また19世紀のフランスの(リオン)大学での授業内容を知る上でも、さらに、梅の法学形成の過程を知る上でも、貴重な作業となるべきものであるが、梅自身の筆記解読がフランス人にとっても困難であることから、今後はより本格的は調査・研究体制を整えないことには歯が立たないことも明らかになった。今後の課題として残された点である。
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