本年度は、研究の最終年度に該当し、これまでの研究成果が多く活字となって現れた。 まず、現代においても常に立ち帰る場たる〈近代法〉については、法制史学会での比較法史学的なシンポジウムにおける報告が二つの論文となった(「フランス民法という世界-革命と近代法の誕生-」、「言語と法-続・フランス革命と近代法の誕生-」)。また、既判力を題材にした学説史的研究は、日仏両国語にて公表された(「真実の推定と既判力-ポティエ、ボワソナード、そして……-」、《On ne pent que presumer la verite:Γ autorite de la chose jugee》)。さらに、給付概念をめぐる歴史的研究は、現代の学説への提言の形をとって新たな展開と発展を遂げている(《Donneret garantir-un siecle apres ou une autre histoire》) このように、個々具体的なテーマに即した研究は一定の成果を上げたが、「歴史・比較・継受」という現象を総体としてどう位置づけるのかという根本問題については、未だ明確な像を描くには至らなかった。テーマの性質上、個人でできることには限界があるのかもしれない。もっとも、法政大学現代法研究所では、報告者が中心となって「歴史と解釈」なる研究チームを組んで活動を行っており、2002年度にはその成果が公表されることになっている。本科研費研究もそれと有機的関連の下に行われていたことから、そこでの研究成果も参照して頂ければ幸いである。 とはいうものの、「法の歴史性」をめぐる研究については、その手法も含めて、改めて練り直して、本格的な共同研究をする必要性を痛感した。
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