研究概要 |
本研究では、社会保障の基盤となっている社会保険制度の財政面につき、高齢化の進展や低成長経済下での財政上の制約という社会保障制度・政策を取り巻く状況の変化に対応した法政策を検討するための基礎的な作業を行った。その結果として、以下のような研究成果を挙げることができた。 まず、フランス社会保障法関連の文献・資料の収集と、データ・ベースの作成を行った。これをもとに、フランスの社会保険制度の基本的な財政の仕組みと近年の政策動向、および社会保障政策評価の取り組みを分析した。とくに、従来、労使自治の色彩が強く、議会による財政コントロールが行われてこなかったフランスの社会保険財政制度において、桂会保険財政赤字やEU通貨統合を背景として、国家(具体的には議会)の関与が強化されていることを明らかにすることができた。また、賃金を賦課ベースとする保険料を中心として財政運営がなされてきたフランスの社会保険財政において、雇用への悪影響等を考慮して、税とほぼ同視しうる,社会保障一般拠出(contribution sociale generalisec)への依存度が高められつつあることを明らかにした。 以上のフランス社会保障法上の研究を踏まえて、わが国の被用者保険および一般国民社会保険(国民健康保険・国民年金)の現行の保険料制度の特徴とその問題点について、考察を加えた。とくに、基礎年金制度に関して議論されている社会保険料方式か税方式かという問題について、法的な見地から見た場合のそれぞれの立場の持つメリット・デメリットについて考察を加え、法政策を考える上での基礎的な知見を得た。
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