本研究において、学生は労働法との関係では、2つの局面で把握される。第1は、在学中の労働、非正規雇用のアルバイトであり、第2は、正規雇用への離陸、就職である。 第1の局面に関しては、求人情報入手手段・経路、(労働)契約締結過程、就業職種・形態、就業時間数・時間帯、賃金形態と計算・支払方法、トラブル事例、離職、労働法リテラシーなど、アルバイトを介しての労働世界、社会への参加について、学生に対して体験レポートの提出を求めるなど、その実態把握に努めた。レポートの幾つかは参考資料として収録するとともに、学生・高校生に対する特別講義の教材としても活用した。 第2の局面に関しては、実際に行われた就職活動の体験報告などを収集する一方、中等教育終了労働市場などとの比較研究も行い、大卒労働市場についてその問題点を洗い出した。つまり、高等教育のマス、ユニバーサル化は、産業構造・就業構造の変化ともあいまって、学生を「チープ・レーバー」あるいは基幹的な労働力として労働市場に登場させている。しかし、法制度の描く学生像は「エリート」段階にとどまっており、法と現実との間にはおおきな乖離がある、ということである。 本研究の今後の展開としては、学生に対する大学側の対応(生活指導、就職相談、教養教育の改革など)と合わせて、学生に対する労働法の助力、労働市場の公的規制のあり方、その制度設計について試論する。
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