国際刑事裁判所設立の動きは、国際連合を中心として急速に高まっている。本研究は、そのような重要な動きを示している刑事法および国際法上の問題を検討しようとするものであって、研究の骨子は、I補完性の原則、II刑事法上の基本原則((1)罪刑法定主義、(2)国際的一事不再理、(3)公訴時効を認めるか、(4)ICCの管轄権)、IV手続上の問題((1)ICCの行う捜査とICCに対する捜査共助、(2)検察官による公訴提起とICCへの係属、(3)訴えの許容性、(4)Presidencyの権限、(5)証拠法の問題)というものである。この分野における研究はあまりなされていないため、本年度は、主に国連文書や外国における関連文献を収集するとともに、その分析・検討を行った。さらに、国際刑事裁判所設立の準備過程を年4回開催された国際連合の準備会合にほとんど出席し、また毎回の会合のために東京で行われる準備のための検討会に毎回出席することをとおして、この問題の核心に触れる研究を行うことができた。 国際刑事裁判所を設立するということは、いわば国際的な刑法・刑事訴訟法・裁判所構成法等を現実に起草し、それを条約の形にまとめあげ、かつそれが多くの国々の同意を得られる内容にする必要があるため、検討すべき論点は多岐にわたる。これまで開催されてきた国連準備会議は1998年4月の第1週で終了し、同年6月からは、いよいよ準備会議でなく、国際刑事裁判所設立のための条約会議が開催される運びとなる。本年度の研究を基礎に、次年度における条約会議での議論に参加し、研究を深めることで、現実化しつつある国際刑事裁判所のあるべき姿に関する提言をまとめることができるものと考えている。
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