(1) 東北地方の三大再審無罪事件の、国賠訴訟を中心とした訴訟記録の収集、整理 松山事件の刑事事件の確定記録、裁判未提出記録(一部)、再審請求事件記録(第一次請求関係を除く)の複写、整理を行った。同事件の国賠事件(係属中)については、手持ちの記録を整理した。以上の作業に、予想以上に経費を要し、弘前事件の国家賠償訴訟関係記録の複写、整理はできず、手持分を整理するにとどまった。 (2) 血痕鑑定実務の研修 1997年11月、勾坂馨教授(当時、東北大学医学部法医学教室)より、血痕鑑定の理論と実際について研修を受けたのに続き、1998年12月、桂秀策博士(岩手医大名誉教授)より研修を受けた。 (3) 鑑定関係者、法医学者の聴取 赤石英博士、勾坂博士(2回)、木村康博士(2回)、桂秀策博士(2回)、内藤道興博士、岡嶋道夫博士から、関係鑑定書および法医学鑑定一般について聴取した。また、青木正芳弁護士、阿部泰雄弁護士、萩原金美元裁判官から関与事件の事実認定につき聴取した。 (4) 元被告人からの聴取 那須隆氏(弘前事件)、斉藤幸夫氏(松山事件)から、聴取した。 以上の作業による収穫は、(1)血痕鑑定、血液型鑑定(吸収法、解離法)の原理と実際につき認識を深めたこと、(2)血痕鑑定からDNA鑑定に至るまでの発展の概要をある程度把握し得たこと、(3)上記三事件の各鑑定書の内容や問題点につき認識が深まったこと、(4)米谷、弘前事件の誤判原因には血痕鑑定などの誤りや血痕鑑定などを評価する側の過大評価、鑑定(の証拠調べ)手続の欠陥などが関わっているか、又は、その疑いがあり、これらのことは、松山事件の誤判原因解明、DNA鑑定のあり方にも重要な視点を提供することを確認したことである。
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