本研究は、外務省が97年度より公開した戦後外交記録を主な史料として、1950年代からベトナム戦争の本格化(1965年)の間の日本の東南アジア政策を再検討することを目的としている。当該期の東南アジアをめぐる日本外交は、(1)各国との外交関係の再構築、(2)賠償問題への対応、(3)コロンボ計画など「地域主義」をめぐる動きへの対応、などレベルの異なる問題への対応を迫られていたが、本研究では(1)と(3)を中心に検討した。とくに(3)に関して、コロンボ計画、エカフェ、SEATO、バンドン会議、東南7ジア債権国会議などについて、外交記録と英米の関係資料を併せて検討した。その成果の一部を「戦後日本のアジア外交」として発表した。 (1)に関しても、インドネシアを中心に検討し、とくに9・30事件前後のインドネシアをめぐる日本外交について、外交記録は現地からの報告と東京の対応に関する詳細で膨大な情報を提供しており、それらを整理して未定槁の史料集を作成した。また、戦前期に東南アジアに関与した外交官、政治家、実業家が、どのような理念と行動指針によって再び戦後の東南アジアに関与していったのかについて、外交記録は有益な情報を提供しており、これらを(3)と併せて検討し、その一部を英文論文としてまとめ、アメリカ・アジア学会(AAS)において発表した。
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