本研究は、経済のグローバル化が国内経済・市場にどのような影響を与え、さらに国内経済の変化が国家の政策選択をどのように規定するのかということを明らかにするために、国際収支の不均衡調整政策を検討することを目的としている。今年度は、近年、盛んとなった「経済のグローバル化・国際化」をめぐる議論から本研究の目的に関連する研究をサーベイすることと、九〇年代の円高期の国際環境および日本国内の対応を調査することを目指した。 今年度の研究の結果、以下の点が明らかになった。理論的枠組みに関しては、「経済の国際化・グローバル化」の政治的帰結を扱った先行研究は少ない(特に日本において)が、その中で、国家の自律性に関する議論と国内要因を重視する議論を具体的に関連づける必要性があることを確認した。また、具体的な事例に関しては、九〇年代の円高期には、七〇年代、八〇年代における先行事例と同様、拡張的財政政策に対する国際的圧力(特に、米国から)があったこと、しかし、国内の対応については、反円高の選好の表出が先行事例と比べ弱くなっていることが明らかになった。九〇年代前半の円高期(超円高と言われた)に、拡張的な財政政策に対する国際的な圧力が日本政府にかけられたにもかかわらず、日本政府が財政政策の出動に消極的であった要因として、社会集団の選好の表出に変化があったことが考えられる。社会集団の選好の表出の変化は、「経済のグローバル化」による影響と考えられるが、この点に関しては更なる検討が必要である。なお、以上の研究成果の公表」は、「国際問題」の論文以外に、1997年度アメリカ政治学会における報告でも行った。
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