本年度は、第一に基本法成立過程における連邦制形成論議に関する資料の収集を昨年に引き続き行いながら、とくにキリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟が基本法制定過程でいかなる提案と議論を展開したかについて検討した。その際、まず議会評議会内のキリスト教民主同盟・キリスト教社会同盟代表団の議論に関して議事録を読みながら吟味したうえ、次いで議会評議会議長のアデナウアーの考え方に注目しつつイギリス占領地区のキリスト教民主同盟の記録文書も併せて読み込んだ。 第二に、連邦制成立の推進役ともいえるバイエルン州首相ヘーグナーおよびエーハルト、そして分離主義的主張を行ったバウムゲルトナーの資料の検討を終え、目下のところはバイエルン州の戦後政治状況と連邦、制論の関係を吟味しているところである。 当初の計画では、キリスト教民主同盟の憲法論と連邦制論について立ち入って調べる予定であったが、連邦制の成立を捉えるには、戦後連邦主義をもっとも強く推進したバイエルン州の連邦構想を先に整理する必要を痛感し、バイエルン州を基盤とするキリスト教社会同盟やバイエルン州首相の戦後構想と連邦主義論の解明に相対的な重点を置いてきた。 そうした作業のなかで、従来の研究が戦後ドイツ政治システムをワイマール共和制やナチズムとの関わりに引きつけ過ぎて捉えていること、難民問題や財政問題など第三帝国崩壊後のいわゆる戦後問題と連邦主義の関係を分析する視点が弱いこと、戦後西欧システムへのドイツの統合という観点と連邦主義論が結びついていることなどに関して認識を深めることができた。そうした研究の成果は、1999年12月発表予定論文「戦後連邦制成立とバイエルン」のなかで明らかにする計画である。
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