平成11年度科学研究費補助金研究成果報告書は、「第一部 研究概要と研究成果」および「第二部 論文」の二部構成とした。 「第一部」では最初に、冷戦終焉後の地域間・民族間関係を考察する手がかりを求め、併せて戦後政治体制の特質を追究し、また統合ヨーロッパの政治システムに関する手がかりを得ることが本連邦制研究の狙いであると指摘した。次いで、3年間にわたる研究作業を各年度ごとにまとめたうえ、本研究期間に作成した二つの論文によって得られた知見を次のように整理した。 第一論文「連邦制成立をめぐるドイツと占領国の交錯」では、連邦制がドイツと占領国との間の最大の争点となったこと、ドイツと占領国の内部にも連邦制構想に関する見解の相違が存在したこと、ドイツの意図は戦後社会問題への対応であり、連合国の関心は権力集中の回避にあったこと、冷戦開始を背景に両者の妥協が成立してドイツ固有の連邦制が制度化されたことを明らかにした。 第二論文「戦後ドイツ連邦制成立と地域アイデンティティーバイエルンと基本法-」では、連邦制成立過程においてバイエルンの地域アイデンティティがきわめて重要な役割を果たしたこと、CSU政治家エーハルトは自らの連邦制構想を掲げて基本法制定過程に意識的に介入したこと、その背景には占領統治機構の集権化とコレクティヴィズムへの危惧があったこと、バイエルン州はその国家性を保持するために基本法を拒否したことを解明した。 「第二部」には、上記二論文の全文を収録した。
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