本研究では、(1)都道府県指定都市における女性政策の背景と実態を、総理府などの資料調査・分析、アンケート調査票による59都道府県指定都市に対する調査ならびに聞き取り調査で明らかにし、その上で、(2)1975年以来進展している女性政策を評価するための指標を試みに策定したものである。 東北地方、日本海側、中国・四国地方、福岡県・沖縄県以外の九州地方が、総合的に比較すると、その他の地域に比べて、多少例外はあるものの停滞気味であるいうことができる。これらの地域に残存する封建的風土に加えて、日本の行政における横並び意識が、停滞を助長した要因の一つであると思われる。 しかし、首都圏でも千葉県のようにその他の地域の県とさしたる違いがみられない県もある。また、埼玉県は千葉県に比べて男女共同参画推進条例を全国に先駆けて制定するなど、女性政策では先進的に取り組み、市町村における行動計画の策定率も60%を越えるなど進んでいるが、市町村によっては同一の県内とは思えないくらい女性行政、女性グループの活動でも大きな違いがある。 女性政策の振興には、地域の風土、首長の姿勢、女性政策担当者の意欲と熱意、女性議員の政治的意思、女性団体やグループの活動の度合い、婦人教育や自主グループによるに学習の蓄積の有無などが、総合的に微妙に作用しているようである。しかし、最も大きな要因は、女性政策担当者の知識、経験そしてなにより、熱意と女性政策担当者に対する女性団体グループのサポートである。 女性政策の評価指標としては女性政策推進のための制度的仕組みの他、労働、教育、福祉など分野毎に男女別にどのように影響を与えたのかを評価するための指標が上げられる。都道府県・指定都市における女性政策推進のための制度的仕組みに関する評価指標については、総理府が毎年行っている男女共同参画関連施策の実施状況調査、北京JACが1998年に実施した調査、および本科学研究費で筆者が行った調査結果などに基づいて私案を策定した。さらに、科学技術分野も含めた女性政策の評価指標私案を作成した。今後はこれら私案の指標の検証をした上で、各々の自治体の実情にあった指標の策定が求められる。
|