本年度の研究はほぼ交付申請書記載の実施計画に沿って進められたが、12月に予定していたイギリスおよびエジプト(あるいはスーダン)での研究レビュー・資料収集は、埃でのイスラーム主義武闘派の動き、スーダン内戦激化のため取り止め、日本での研究に切り替え、e-mailでイギリスと研究打ち合わせを行った。このため研究費の内当初外国旅費に予定した予算を他の費目へ配分した。 研究は、1.エジプトの経済自由化(富田広士)と2.アフリカの角諸国の民主化(Peter Woodward)に関して行われた。 1.研究代表者が明らかにしようとした点は、1964年〜66年に一部表面化した経済自由化構想の由来と埃の開発戦略の展開の中でそれが持つ意味である。米ケネディ政権の開発援助やIMF融資が埃開発戦略に与えた影響を考察した。1962年段階では工業化戦略自体の見直しは表れず、従来型の開発計画の遂行を、対外財政援助の獲得と貿易自由化の促進とによって支えようとしていた。 2.ウッド、ワードは、アフリカでは1990年代に入って表面的には民主化が広範囲にわたり達成されたかに見えるが、実際には、制度化の未熟な側面をスーダン、ソマリア、エチオピア、エリトリアについて考察した。その要因として、民主化と平行して弱体化した国家の再建に取り組むといった国内要因が大きいとし、それに加え、周辺諸国の介入など地域的・国際的要因もまた民主制を抑制する方向で作用しているとした。 来年度は、以上の基礎的枠組みの中で両者の研究を共同研究として展開させるために、主要な研究対象国をエジプトに絞り、上記1.に関しては開発戦略の歴史的推移を他の中東諸国(例えばトルコ)やインドとの比較を含めて考察を進め、上記2.についてはアフリカの角諸国との比較を軸に、歴史的推移と国内・地域・国際要因を探る。
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