1。日欧政治安全保障協力を検討する前提として、欧州側の情勢を把握しておく必要がある。本年度は、欧州連合条約改正会議の終結(1997年6月)、改正条約(アムステルダム条約)の署名(10月)、欧州連合の旧東欧諸国への拡大交渉の具体化(12月)、北大西洋条約機構(NATO)の旧東欧諸国への拡大(7月)と、欧州の政治・安全保障情勢にとって、大きな節目となる決定がなされた。 2。アムステルダム条約における安全保障、防衛の規定は、現行の欧州連合条約から大きな進展はなかったが、欧州連合、NATOともに、拡大を決定したことは、1989年以降の変動が、欧州の最も重要な地域組織の変容に結実したことを意味する。 3。欧州連合やNATOの拡大は、欧州規模に留まらず、日本の安全保障にも影響を与えている。日本におけるアジア太平洋の専門家は、ロシアがNATO拡大に反対しているために、中国とロシアの接近、提携を予想したが、実際には、ロシアは日本を含む、国境を接する国々との関係改善に乗り出した。短期的には、NATOの旧東欧への拡大は、ロシアが日露関係を改善する一つの要因になっている。 4。欧州では上記1のように、大規摸な再編が進行しているために、欧州情勢の分析に関するレヴュ-を専門家から受けるとともに、OSCE地域協力セミナー(6月、ウィーン)、フランスの国際問題研究所と日本国際問題研究所の共催会議(6月、12月、東京、パリ)、英国王立国際問題研究所と日本国際問題研究所との共催会議(7月、ロンドン)などで日本と欧州の政治・安全保障関係について、日本国際政治学会(10月、那覇)などで欧州の安全保障の再編について、研究報告を実施した。 5。同時に、日本外務省、防衛庁、フランス外務省、欧州委員会などの実務家と、上記の情勢の変化を踏まえた、日欧間の協力について、意見交換を実施し、分析の材料とした。
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