1。最終年度にあたる本年度は、欧州政治安全保障情勢の変動の整理分析を中心とするとともに、3年間の成果を総合的に検討し、とりまとめた。 2。1999年3月の北大西洋条約機構(NATO)のコソボ問題をめぐる軍事行動は欧州の安全保障の再編に大きな影響を与えた。欧州連合は領域防衛は対象外としつつも自ら地域紛争に対処するため、実際に欧州連合として危機管理を実施することを1999年6月のケルン欧州理事会で決定し、これを同12月のヘルシンキ欧州理事会でさらに具体化する決定をなした。 3。NATOは3月にポーランド、ハンガリー、チェコを加盟国として迎え、同年4月には、NATOのワシントン首脳会議において、1991年に採択された新戦略が改訂されすでに実施していた危機管理を任務として明確に書き込んだ。 4。欧州連合の東方拡大については、加盟交渉がまだ始まっていない申請国すべてと加盟交渉を開始することになった。 5。以上のような大きな変化を踏まえ、これが日本に与える影響および日本の対欧州政策について考察した。基本的には、平成12年1月のパリにおける河野外務大臣の政策演説にみられるように日本の外交政策において欧州を具体的に重視し始める兆しがでてきた。 6。研究成果としては、数多い口頭報告の主要なものとしては、「グローバル・フォーラム日欧対話」(中東欧におけるNATO・EU拡大の影響)では討論者をつとめ、ジュネーヴ大学高等国際問題研究所および汎欧州政策研究学会で、それぞれ日欧政治安保関係について報告した。このほか、日本政治学会では、アジア・太平洋との比較の観点に立った地域レベルの協調的安全保障体制について、日本EU学会では欧州連合の軍事化の問題について報告し、日本でも成果を還元した。 7。同時に、3年間の研究を踏まえて、別紙の研究論文を発表した。
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