研究概要 |
1.本研究では、歴史的視座から、冷戦終結以降の日欧政治安全保障協力関係を検討した。 2.欧州は、1989年以降、安全保障構造において、大きな変動にみまわれ、西側にとっての脅威であったワルシャワ条約機構およびソ連は消滅した。このため、欧州のさまざまな安全保障組織(OSCE,NATO,WEU,さらにEU)も変容を迫られ、新たな任務として危機管理を行うことになった。Eu,NATOおよび欧州審議会は加盟国拡大の過程にもある。 3.EU自体、予想外の大きな変動を受けている。そもそも1996年の政治間会議が機構改革という拡大に備えての重要問題で合意に至らなかったため、再度、2000年2月から新たな政治間会議で交渉が開始されている。加盟申請国との拡大交渉および危機管理任務履行のための整備も加わって、欧州連合は内部の問題対処に大きなエネルギーを取られる時期に入っている。 4.他方、日本は、まだ経済・金融危機から抜け切れていないが、1989年以降、欧州の主要二国間関係の活発化と同様、欧州の安全保障組織との関係も強化してきている。新たなフォーラムである日本と北欧諸国の首脳会議も2回実施された。 5.日=EU関係については、EUは対日政策文書を準備していたが、委員全員の99年の辞職や日本の内政の不安定さから「作業文書」として99年に発表された。ここでも政治関係強化が提唱されている。 6.日本の河野外務大臣は、2000年1月、パリで対欧政策演説を行い、政治安全保障を含む、日欧関係の強化を打ち出した。日=EU間の基礎であるハーグ宣言10周年に向けて、基本文書の改訂強化案もフロートしている。 7.強化案としては、履行可能なプロジェクトを打ち出すことが肝要であり、とくに、共通の利害関心事項であるロシア問題、および危機の非軍事的なマネジメントなどにおいて協力の可能性を見出すことができよう。
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