この研究プロジェクトの主な目的は1910年〜1930年の朝鮮半島での日本の植民地政策を検討することである。この政策に関しての当時の知識人や新聞・雑誌記者、政治家等のそれぞれの意見を参考にこの問題を総合的に理解し、朝鮮人や日本人のみではなく欧米人の立場からも検証した。具体的に以下の問題点を検討した。1)朝鮮の植民地の歴史は19世紀末から20世紀にかけての世界の植民地の歴史上どこに位置するか。2)朝鮮半島の植民地支配は、日本の他の植民地支配(例えば蝦夷、琉球諸島や台湾)との類似点と相違点は何か。3)朝鮮併合時、植民地政策を同化主義に決定するにあたりどのような疑問点が生じたか。4)同化主義を植民地政策とすることにした場合、同化させる朝鮮人に対してどのようなイメージを想像したか。5)日本「人種」加入のメリットを朝鮮人にどのようなプロセスで説明したか。6)朝鮮人はこの同化政策に関し、どのような反応を示したか。 このプロジェクトでは、朝鮮半島での日本の植民地政策は大日本帝国においては周辺(peripheral)に位置するものであったと結論づけた。それはイギリスでのアイルランドやスコットランド、フランスでのアルジェリア、さらにドイツでのアルザス・ロレーヌと類似点があり、植民地的レトリックとして同化主義を謳いながら、植民地的行動は分離化を表明した。日本の場合には、朝鮮人との古代における人種関係をレトリックとして論証し、日本人の指命は500年間の朝鮮時代(1392-1910)に中断されたこの関係を修復し、朝鮮人が日本人に追い付くための指導を行うことであったと考えた。この政策に関して、朝鮮人の反応は賛否両論であった。日本人の指導は必要と認識した人々も反対者の中にいたが、彼らは日本人の朝鮮人に対する不遜で不平等な態度から朝鮮半島での日本人の存在を反対した。
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