1. 対外直接投資は国内の製造業の空洞化を通じて研究開発活動を空洞化させる可能性がある。そこでまず製造業38業種のデータを使って、1985年から95年にかけて海外生産を拡大した産業では国内の実質生産にマイナスの効果があったか否かを、他の要因をコントロールしたうえでテストした。製造業分野への対外直接投資に限っても、投資先の安価の労働を利用したり新たな貿易障壁を飛び越えることを目的とし輸出代替や逆輸入を通じて国内生産にマイナスの影響を及ぼすと考えられる投資だけでなく、投資先の市場や資源の獲得を目的とし国内生産にプラスの影響を持つ可能性のある投資が含まれている。回帰分析では、このような問題意識から対外直接投資を相手先別(アジアとそれ以外)・動機別に区別して国内生産と純輸出への影響を推定した。その結果予想どおりの結果を得た。 2. 最近の内生的成長論では、研究開発活動が行なわれると社会の知識一般が増え、それが新たな研究開発を容易にする可能性がしばしば指摘される。研究開発活動が海外で行なわれる場合には、この恩恵が研究開発に行なわれるホスト国で生じるか投資母国で生じるかにより、投資母国の経済成長に与える影響は大きく異なる。理論モデルによりこの関係を分析した。 3. 研究開発活動の海外移転の程度を日米の産業別データについて比較分析した。またマイクロデータの利用により、海外で研究開発支出を増やした企業が国内で支出を減らしたか否かを実証分析した。
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