企業統治としばしば訳されるコーポレー卜・ガバナンスのあり方を決める上で金融システムの果たしている役割を考察し、最近の日本における金融制度改革や情報通信システムの発展が日本の金融システムの将来にどのような変化をもたらすのかという問題を中心に研究した。 コーポレート・ガバナンスとは、企業の経営行動を管理する構造や企業の基本政策を決める最高責任者を選抜する構造がどうなっているかということに関わる。そして、企業の経営者に対するモニタリング手段を決定し企業の規律を律するしくみに関係している。また、このコーポレート・ガバナンスという要素は、企業の資金調達方法や債務不履行になった時の債権者の対応のしかた等の金融システムのあり方とも密接な関連を持つ。 最近の日本における金融制度改革はビッグ・バンと総称されるが、その中でも、日本企業のコーポレート・ガバナンスのあり方と一般に深く関係するのは、企業の資金調達に関わる事柄や債務不履行になった時の債権者の対応のしかた等に関する金融制度改革である。したがって、企業の資金調達に関わる事柄や債務不履行になった時の債権者の対応のしかた等を中心に研究を進めた。 研究の成果として、まず、コーポレート・ガバナンスのあり方と長期労働契約のあり方に関して、金融システムと労働システムの制度的補完性を考慮して、アングロ・サクソン的なシステムと日本・ドイツ的なシステムとの間の動学的な安定性を進化ゲームのモデルを使って考察した。そして、どのような場合にどちらのシステムに収束するかを明らかにした。さらに、支配的な投資家が存在する際に、どのような証券デザインをすれば経営者の規律づけに役立つのかも考察し、その際に重要な役割をはたすのは、倒産の可能性をも考慮に入れたスタンダード・ボンド、もしくは、コール・オプションを伴うボンドであることを明らかにした.
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