ASEAN(東南アジア諸国連合)は、1967年8月8日に結成された地域協力機構である。したがって、1997年には結成30年を迎えることになる。そして、1997年7月末に予定されている外相会議において、ラオス、カンボジア、ミャンマーの加盟を認めることが5月には内定したが、結果的にはカンボジアの加盟は見送られた。カンボジアの加盟が実現するとASEANには東南アジアに存在している10の主権国家のすべてが加盟することになる。ASEANは、まさに東南アジアの代名詞となるのである。 ASEANを分析するには、ASEANという地域協力機構と、それに加盟している諸国とを明確に区別しなければならない。世上、とくに日本においては、地域協力機構としてのASEANについての関心が薄く、その実態はあまり知られていない。 ASEANは、一般的には「発展途上国の優等生として、いまや世界に向けて発言力を強めている東南アジアの地域協力機構。ASEANは近年、国際政治、安全保障問題に対しても発言力を強め、その経済的成功と併せて、ますます重要な地域協力機構となりつつある」とか、「政治的安定と経済発展とを保証していく枠組みを作り上げることに成功してきている」とか、「発展途上国どうしの地域グループとしてはもっとも成功しているものの一つである」というように、賛辞をもって語られるのが常である。『ASEAN経済協力の成果と展望』にあげたものはほんの一例であって、このような賛辞は枚挙にいとまがない。しかし、それでは具体的にどのような地域協力をしてきたのか、どのように成功したのかというと、はっきりと記憶している向きは少ないのではないだろうか。 『ASEAN経済協力の成果と展望』では、そのASEANがこれまでに行ってきた経済協力を総括するとともに、経済の現状を分析し、今後の展望を示した。
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