本研究では、地球環境問題に関し、(1)理論的に構築したモデルにおいてゲーム理論による分析を行い、(2)そのモデルで得られた理論的解決策の有効性を検証するための経済学実験をおこなった。 (1) の研究については国際会議(社会的選択と厚生経済学国際学会、1998年ブリティッシュ・コロンビア大学)、国際研究集会(ゲーム理論とその応用スペイン集会、1998年バルセロナ大学)、国内の学会(理論計量経済学会、1997年早稲田大学)、国内の研究集会(数理経済学研究センター研究集会、1998年数理解析研究所)、国内の研究会(多数)において報告された。これらの研究集会における貴重なコメントや意見交換は、本研究の進展に非常に有用であった。研究の成果は論文“TheCore of an Economy with a Common Pool Resource:A Partition Function Form Approach"にまとめられ、国際的な学術雑誌に投稿、受理され、1999年中の掲載が決まっている。 (2) 上記の理論モデルにおいて理論的に導出された環境破壊を個人的な誘因により抑制するためのメカニズムについて経済学実験を行った。この実験の結果は論文「協力の形成に関する経済学実験」にまとめられている。しかしながら、この実験は、環境問題を明示的に被験者に提示した実験ではなく、個人間での協力の形成をいかに達成させるかという広範囲な文脈における実験である。また、その解決を目的とするあくまでも一つのメカニズムの限定的な検証にすぎない。環境問題について、より広範な結論を得るためには、さらに大規模な経済学実験が今後、必要である。
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