本研究の2年間における研究成果の概要は以下のとおりである。 (1)九州農業試験場を訪問し、環境問題の実態および当事者の意思決定方法やその内容を調べるために阿蘇山周辺の大根栽培農家、牧野組合、役場などでヒアリングをおこなった。この成果は(3)の理論モデルおよび今後の発展モデルを作成する上で大きな参考となっている。 (2)日本国内および海外から専門家や研究者を招き定期的に研究会を開催し、本研究に関連する内容の報告とそれに対する議論を行った。その成果は(3)の理論研究に反映されている。 (3)理論的な研究成果を論文 "The Core of an Economy with a Common Pool Resource: A Partition Function Form Approach"としてまとめ、国際会議(社会的選択と厚生経済学国際学会)、国際研究集会(ゲーム理論とその応用スペイン集会、数理計画国際シンポジウム)、国内の学会(理論軽量経済学会)、国内の研究集会(数理経済学研究センター研究集会)、国内の研究会(多数)などにおいて報告した。この論文は国際的な学術雑誌に投稿、受理され、1999年中の掲載が決まっている。 (4)上記理論研究において、環境破壊(資源の過剰利用)を抑制する重要な要因は、資源の過剰利用者のもつ他者からの懲罰の予想であることが示されている。そこで、その予想を明示的に表現する単純化されたメカニズムを考案し、そのメカニズムの経済学実験を行った。この実験結果は論文「協力の形成に関する経済学実験」にまとめられている。また、このメカニズムの有効性をさらに多人数の状況で検討するため、コンピュータシミュレーションモデルを、その分野の専門家の協力を得て構築したが、現時点では、断片的な結果しか得られていない。より広範な成果と結論を得るためには、さらに大規模な経済学実験とシミュレーションが今後必要である。
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