本研究は産業連関表を用いて、様々な角度から日本とドイツの総合比較を試みることを目指している。初年度はまず、日独産業連関構造の長期比較のための統一産業連関表の検討をおこない、1960・1990年の暫定表を完成した。この産業連関表は副産物や帰属利子等の扱いをすべて調整しているため、日独相互に比較可能であり、名目価格だけではなく、1990年実質価格でも作成されているために、産業連関構造の実質的な変化を比較することが可能である。従来産業連関表による長期の国際比較、特に日独比較は試みられたことがなかっただけに、大きな意義を有するものと思われる。その分析もすでに終わっており、次年度以降に公表予定である。さらにその副産物として、統一ドイツの産業連関構造を考察する上でも重要な旧東ドイツ時代の1987年産業連関表を入手し、体制末期の経済構造を分析し、すでに公表した。この財貨生産中心の産業連関構造こそが、統一ドイツの東側の出発点を成しており、統一後の変容を考察する上でも欠かせないものの一つだろう。 さらに、通産省の1985-1990年日独2国間国際産業連関表をベースに、1980・1993年をも延長推計した1980-1993年日独国際産業連関表を完成させた。通産省の2国間表を1985年と1990年の2カ年接続するだけでも、日独間の貿易を通じた連関構造の変化をある程度は分析可能であるが、その前後を追加することにより、さらに長期的な展望が得られる。この分析結果等の公表も次年度以降の課題である。 最後にドイツで作成された世界初の本格的な環境産業連関表を入手し、その概要の検討をおこなった。初年度はこれらの研究のために、Dr.Carsten Stahmer(ドイツ連邦統計局)を招聘し、ドイツ側統計の特徴と問題点、将来計画、日本との比較可能性等についてレビューを受けた。
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