本研究は産業連関表を用いて、様々な角度から日本とドイツの総合比較を試みることを目指して行われた。最終年度に当たる今年度は、まず前年度行われた二酸化炭素排出構造の日独比較に関する研究を、さらにエネルギー消費構造の比較も含めて総合化し、公表した。産業によるエネルギー消費と二酸化炭素発生構造だけではなく、とりわけ、家計による二酸化炭素の直接的発生はドイツの方が多いこと、それは石炭等のエネルギー使用の多さが原因であること等を解明した。次に公表されたばかりのドイツの95年産業連関表を用いて、統一後のドイツ経済を考察した。ドイツの90年代は、就業者数の減少が続き、結果として日本以上にサービス産業の比率が高まったが、それには、90年代前半は設備投資の低迷、90年代後半は建設投資の減少も影響していることを解明した。通貨統合参加資格の収斂基準によって、財政赤字をGDPの3%以内に抑える必要から、統一基金等の東側への移転を絞ったことも、建設投資の減少に拍車をかけたとすれば、またEUが15カ国となり、通貨統合によって加盟国の関係もいっそう緊密になってゆくとすれば、今後はドイツ経済もEUという枠組みで考察する必要が増大するであろう。そこでそのための準備作業の1つとして、ドイツ-EU間の国際産業連関表の試作も行い、圧倒的に高い相互依存状況が分析された。最後に、日本の中部地方とドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州の地域産業連関表を、相互に比較可能となるように組み換え、日独の地域比較を行った。ともに自動車生産に特色を持つ地域であるが、産業連関分析によって、地域生産全体の自動車への依存度では、中部地方の方が圧倒的に高いこと、また自動車のみに依存する傾向が強い中部地方に対して、バーデン・ヴュルテンベルク州では自動車だけではなく、一般機械への依存も高いという違いもわかった。
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