本研究では、産業連関表を用いた日本とドイツの総合的な比較研究が行われた。平成9〜11年度における研究の概要、及び研究で得られた知見は以下の通りである。 1.1960-1990日独接続産業連関表の作成と分析によって、1960年にはドイツの方が高度成長を先行させており、日本との格差も大きかったが、この30年間に逆転したこと、その中で、何が劇的変化を遂げ、何が依然として同一構造であるのかを解明した。2.1987年の遡及産業連関表によって、旧東ドイツは財貨の生産が中心で、サービス化といった西側の潮流から極めて遅れた状況にあったこと、しかしコメコン諸国への輸出に大きく依存した経済構造であったことを示した。3.統一後のドイツ経済を考察し、90年代前半の設備投資の低迷、後半の建設投資の減少にも影響されて、景気後退と特に製造業で就業者の減少が起こり、その結果として日本以上にサービス産業の比率が高まったことを解明した。4.ドイツ-EU間の国際産業連関表の試作を行い、圧倒的に高い相互依存状況を分析した。一方、日本-ドイツ2国間国際産業連関表からは、依存度は依然低いものの着実に相互依存を深めていることを検証した。5.日本の中部地方とドイツのバーデン・ヴュルテンベルク州の地域産業連関分析を行い、両地域における自動車生産の意味について考察した。その結果、中部地方はドイツと比べても、圧倒的に自動車生産に依存した地域であることが判明した。6.二酸化炭素排出構造の日独比較では、80年代中盤よりドイツの方が排出総量自体は少なくなったが、石炭等のエネルギー使用の多さによって、家計からの直接的発生ではドイツの方が多いことを解明した。7.世界で初めて作成されたドイツ連邦統計局の物的産業連関表を検討し、生産や消費活動が誘発構造を通していかに大気や水などの非生産自然資産に依存しているか等を解明した。
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