(1)金利の期間構造をモデル化する方法として、イールドカーブ全体を短期金利で表現する方法がある。その方法では、短期金利のプロセスが全ての金利を決定する構造になっているため、そのプロセスの定式化が重要となる。本稿では、CIR型モデルの現象記述力を評価する。まずCIR型モデルは条件付分散が変動するAR(1)時系列モデルであるが、そのマルコフ性がゆえに金利の循環的変動を説明する能力を欠くことを理論的に示す。実際、時間の経過の中で平均回帰性の機能は、定数に収束することを意味し、金利の変動はマルチンゲ-ルとなり、実際の金利変動に対応しない。実証としては、モデルの自己整合性検証を行い、多くの金利はモデルの前提した構造を満たさないことを示した。 (2)離散時間の金利の確率プロセスを定式化し、割引債の価格との関係を与え無載定性の条件を導出した。特にHeath=Jarrow=Mortonモデルの詳細を展開した。また解約権付定金預金の解約権の理論価格を導出している。これは、オプション内蔵型の証券価格理論の基礎をなすもので、金利変動にからむプリペイメント行動の問題に関係してローンや住宅ローンのプライシングにも応用可能である。
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